私、白河が小学高学年の頃の話です。
ある日の朝、空に向かって字を書いていました。
それはお習字の稽古『空書き』のひとつです。
すると横にいた父が、空を見上げて「凄いね。上手に書くもんだね。大したもんだ」
驚いて「え?見えるの?私の書いた字が」
父は大きく頷いて「うん、良い字だ。力の入り方とかはね方とか見事だったよ」
嬉しくなった私は、もっと大きくそして力強く書いたのでした。
父は朝の日課で庭の木を見上げていたのでしたが「うん、うん、良いね~。天才か??」と言ってくれたのでした。
誉めながら、父はさっきまで読んでいた新聞の記事の話をしてくれました。
「昔のえらいお坊さんがこう言っているそうだよ。『水に書いた文字・砂に書いた文字・岩に書いた文字』というのがある」
そう言って小学生の私にも分かるように、その意味を話してくれたのでした。
大人になって改めて、その意味の深さを知ります。
つづく