「白河先生、実は私、医者に余命宣告されました。『恐らく、あと数日の命でしょう・・』と。妻は、ベッドの横で泣いていました。
医者は泣いている妻に『ご家族や親せきの方がたに会わせたい方がいらしたら、明日にでも連絡を取られた方が良いかもしれません』そう言って病室を出ていきました。
その時の私の意識は、シッカリしていました。明日以降、親戚たちが押し寄せる前に妻と話をしておかなくては・・・。
妻に言いました。
「結婚して数十年ありがとう。子供たちもしっかり育ったことは君のおかげだと感謝しているよ。会社の経営も苦労をかけたけど、軌道に乗っていて絶好調だし『いよいよこれからだ!!』と夢を持っていたのに、ごめんな。君を幸せにしてあげたかったのに、まさかこんな事になるなんてごめんな。」
妻「いいのよ、あなた。もう分かったから。だから少し眠ったら??」
夫「いや、もし眠ってしまったら二度と目が覚めないかもしれない・・。後悔したくないんだ。だからもう少し話を聞いてくれないか?」
妻「うん、うん。少しだけよ。そしたら安心して眠ってね。お薬の時間がきたらちゃんと起こすから。それにお医者様は『おそらく』っておっしゃっていたし。だから大丈夫かもしれないから、私ずっと傍にいるから安心してね。」
それで私、最後の力を振り絞り妻の手を握りました。そしてその後、どうしても話しておかなければいけないとを話し始めました。今までの事これからの事を、声になるかならないかの力でしたが『君が一番大切だから』と妻に話を始めました。
妻は「うん、うん。分かったから。わたしなら大丈夫だから。何も気にしなくていいから。だからもう眠ってね。」
妻は私の手を握り返し、大泣きしながら話の全てを受け止めてくれている様子でした。私は、これでもう思い残すことはないと安心して、暫くぶりに熟睡しました。
夜中も一生懸命看護してくれている妻を、夢うつつですが何度も「ありがとう」と言いながら肩を抱き寄せサヨナラの言葉を交わしました。
ところが、翌日から私の体調が変わってきたのです。
“回復の兆し??”と図々しく思う私がいました。あれほど大泣きした妻の顔にも少しずつ笑顔が出始めてきました。
私は「そうか、神様も粋なことをされるもんだ。これを『神様のギフト』というのか。私が死ぬ前に一度楽にしてくださるのだ」と心から感謝をしました。息をするのも、あれほど苦しかったのに、その日はとても楽で、また元気になるのかもと信じたい自分がいました。
しかし、その喜びもつかの間、真夜中に私は息が出来ない苦しさで目が覚めました。
なんと、目を開けたそこに鬼がいたのです。
「ぎゃ~」と声を上げるにも喉がふさがって出ません。
白河先生、いったい何が起きたのでしょうか?私は今、こうして生きていますが、あの時に私に起きたことを分かるなら教えていただけませんか??」
真剣な表情の男性の話を聞きながら人間の心理についての話をしました。
男性は「ええっ、そんなことって!!だからって私が危篤状態に陥るのですか??」
つづく